BMPCC 4Kがめちゃめちゃ楽しいと、今更盛り上がる

by fotografika

BMPCC 4Kって?

ものすごく今更な投稿ですが、BMPCC 4KことBlackmagic DesignのBlackmagic Pocket Cinema Camera 4Kがめちゃめちゃ楽しくて感動した話です。

BMPCC 4Kを検索して、運悪く?このページにたどり着いてしまった方に簡単に説明すると、外見は普通の一眼カメラと同じですが、ネイティブ4KのRAWフッテージを撮影できるプロフェッショナル向けのシネマカメラです。

デジタル一眼レフやミラーレス一眼カメラで、RAWデータの静止画を撮影する機能は一般的になっていますが、4Kの60pや120pに対応していてもRAWデータの動画を撮影できるカメラは多くありません。最近では一部のハイエンドモデルで「Log」撮影が可能な機種もありますが、LogはRAWと異なります。

ものすごく端的に例えると、RAWは業者から仕入れた「生肉の塊」、Logは生肉の塊から血抜きしたり筋を取ったり「下処理をした生肉」、そして最後に「良い塩梅で調理された肉」がMP4やMOVといった感じです。

強引に例えてしまい批判がすごそうです。

BMPCC 4Kで撮影できるRAWフッテージは、すべてあなた次第でどうにでもできる生データということです。BMPCC 4Kは流行りのミラーレス一眼カメラが持っているような当たり前の機能をカットして、「RAWフッテージ撮影」というステータスに全振りしたプロフェッショナル向けのシネマカメラです。

RAWとか良くわからないし、プロ向けだと敷居も高そうだなと感じた方にこそ使ってほしいのがBMPCC 4Kです。もちろん既存の一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラでも必要十分な動画を撮影することはできますが、BMPCC 4Kは動画コンテンツの可能性を広げるだけでなく撮影者をも育ててくれます。

ここがスゴイよBMPCC 4K

ここがスゴイよBMPCC 4Kということで、私が盛り上がってしまう5つのポイントをご紹介します。私だけ盛り上がってるのも寂しいので、その熱が少しでも伝われば。

  • ネイティブ4K対応
  • RAW動画撮影
  • LUTによるカラーグレーディング
  • マイクロフォーサーズマウント
  • 外部ストレージへの記録

BMPCC 4Kの最大の特徴はネイティブ4KのRAWフッテージを撮影できることです。

そもそもネイティブ4Kって?
ご存知の方も多いと思いますが、4Kと呼ばれる解像度には、その業界や実際に使用されるデバイスによって解像度が異なります。

民生向けの液晶モニタや液晶テレビ、デジタル一眼レフやミラーレス一眼カメラ等が準拠するITU-R規格の4Kは3840px*2160px、4K UHDとも呼びます。

一方でデジタルシネマ向けのDCI規格の4Kは4096px*2160pxに準拠する解像度で、通称「4K (4K2K)」と呼ばれる横解像度4000px、縦解像度2000px以上をしっかりと満たした規格です。

その他、4096px*2304px、4096px*2048pxなどもある。

ITU-Rの4K UHDもDCI 4Kも規格的にはどちらも正しい4Kであることに間違いはありませんが、それぞれが消費されるシーンの違いで解像度に差が出ています。4K UHDはFHDの4倍となっているため、4K UHDで撮影しておいて実際はクロップやトリミングを行って最終的にFHDにすることはあると思いますが、DCI 4Kで撮影する場合は4096px*2160pxの解像度をそのままに、クリエイターが意図する作品のフレームサイズとして使うパターンが多いかと思われます。

BMPCC 4K

一般的なカメラ例

解像度

4096 x 2160 (4K DCI)
4096 x 1712 (4K 2.4:1)
3840 x 2160 (Ultra HD)
2880 x 2160 (2.8Kアナモルフィック)
2688 x 1512 (2.6K 16:9)
1920 x 1080 (HD)

4096 x 2160 (4K DCI)
3840 x 2160 (Ultra HD)
1920 x 1080 (HD)

フォーマット

Blackmagic RAW
ProRes 422 HQ
ProRes 422
ProRes 422 LT
ProRes 422 Proxy

MOV (H.264)
MP4 (H.264/H.265)

BMPCC 4Kはその撮影解像度でRAWフッテージを撮影することができます。一部のハイエンド一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラでも、DCI 4K解像度の動画撮影をすることは可能ですが、何れもMOVやMP4といったフォーマットのみとなります。つまりBMPCC 4Kは、シネマあるいはプロフェッショナル向けと呼ばれる業務用映像機器と同等の映像をこの小さなボディで撮影することができるのです。

従来RAWデータは、そのビットレートの高さからストレージ容量がいくらあっても足らない、さらにそのデータをしっかり編集できるマシンが無いといった問題を抱えていましたが、そういった問題をまるごと解決したのがBlackmagic DesignオリジナルのコーデックであるBlackmagic RAWです。このBlackmagic RAWの最大の特徴は、RAWデータでありながら画質と品質を維持したままファイルサイズを小さくし、ポストプロダクションの負荷を驚異的に軽減することができます。デスクトップマシンだけでなく、ノートパソコン(相応のスペックは必要)でも編集可能な軽快さを持ち合わせています。

Blackmagic RAWは固定ビットレート(Constant Bitrate)と、固定クオリティ(Constant Quality)からなる2つのエンコード方法を選択することができ、固定ビットレートは3:1、5:1、8:1、12:1の圧縮比から選択、固定クオリティはQ0、Q5から選択することができ、RAWデータを扱いながらそのファイルサイズを任意でコントロールできるというメリットもあります。

Blackmagic Pocket Cinema Camera (Blackmagic Design)

RAWデータを扱うことによって非破壊の可逆的編集が可能となり、色温度や輝度、コントラスト等を思いのままに意図するイメージへ近づけることができますが、RAWフッテージ撮影中はコントラストが低く、眠い印象の映像がモニターに映るため、完成イメージとのギャップが生まれやすくもあります。

そこで撮影中のRAWフッテージにLUT(ルックアップテーブル)を適用させることで、まるでポストプロダクションでカラーグレーディングをした後のような映像をシミュレートすることができます。また撮影中のRAWフッテージに適用したLUTをそのまま焼き付けて収録することも可能で、編集作業にかける時間を大幅に短縮することもできます。

カラーグレーディングをシミュレートするLUTプロファイルは、BMPCC 4K本体内に10個保存することができ、Blackmagic Designの動画編集ソフト「DaVinci Resolve」によって任意でカスタマイズすることも可能。

かゆいところに手が届くとは、まさにこのことです。

BMPCC 4Kはマイクロフォーサーズのセンサーとマウントを採用しています。センサーサイズの大きさによって影響を受けやすい暗部のディテールなどは35mmフルフレーム等に劣りますが、低照明条件に適応するデュアルゲインISOを採用することで暗部耐性を高めています。

そしてマイクロフォーサーズマウントの採用により、安価で種類豊富なレンズからお気に入りを選択することができます。マイクロフォーサーズマウントのレンズは中古であれば数千円から、手振れ補正を搭載した新品の標準ズームでも1万円台から入手することができるため、画角、ボケ、シャープネス、風合いなど様々なレンズで撮影を楽しむことができます。

またレンズアダプターを使用すれば、既存のレンズを活用することができ、最初からあれもこれもと機材投資に散財する心配もありません。

左側面には各種ポートを備え、上から3.5mmマイクイン、3.5mmヘッドホン、フルサイズHDMI出力、12V電源、USB Type-C、mini XLRを搭載。mini XLRによりRAW動画だけでなく、高音質で録音することも考慮されたつくりになっています。

そしてUSB Type-CはポータブルタイプのSSDを接続し、外付けストレージとしてRAWフッテージを記録することができます。もちろんSDカードやCFastスロットが右側面にありますが、RAWフッテージの保存ではSDカードの転送が間に合わず、CFastはメディアの価格が高すぎるとうデメリットがあります。

USB Type-C接続のポータブルSSDによって、高速データ転送に対応した大容量ストレージを低価格で手に入れることができ、RAWデータの容量が大きすぎて扱えない、撮影できる時間が短すぎるといった従来の問題を根本から解決します。

撮影者を選ぶシネマカメラ

ここまでBMPCC 4Kへの熱い思いを語ってきましたが、もちろん私がデメリットと感じる部分もいくつかあります。

  • バッテリーの持ち
  • コンティニュアスAF非搭載
  • チルト及びバリアングル非対応
  • スタビライザーへの対応

まず初めにバッテリーの持ちの悪さが挙げられます。

撮影する際はカメラをセッティングして、構図や位置、どういったフレーミングで撮影するか、またその時のISOや色温度、LUTの適用などを確認します。そうやって色々と試行錯誤しているうちにバッテリーが減り始め、いざRAWフッテージの撮影を始めようとするとバッテリー残量が残りわずかに。

恐らくそれを見越して、入手性の高いCanonのバッテリーパック「LP-E6」互換を採用していますが、撮影ポイントを探しながら終日撮影しようと思えば、予備のバッテリーパックが少なくとも6個以上必要になるでしょう。バッテリーパックの予備がない場合は、あらかじめ撮影するシーンをイメージして撮影以外の無駄な電力消費に気を使う必要があります。

AFについては、AFに対応したレンズ、あるいはAF対応のマウントアダプターとの組み合わせであれば、1回だけのワンプッシュAFを使うことができますが、被写体を追尾するようなコンティニュアスAFは非対応となっており、撮影中はMFとして操作することが基本になります。

最新のミラーレス一眼カメラは、超音波モーター搭載のレンズと組み合わせた高精度のAFや、顔認識、瞳認識などのAF機能を備えているだけに、敷居の高さを感じる部分です。

調べてみるとBlackmagic Design公式ではありませんが、「CDA-TEK」というサードパーティツールによってAndroidデバイスでフォーカスコントロールができるようです。

CDA-TEK
http://www.cdatek.com/

何とかしてフォーカスコントロールを・・・。と考えている方は試してみる価値があるかもしれません。

勿体ないと思うのが背面の5インチモニターです。

FHDに対応する高精細、かつBMPCC 4Kの設定をタッチパネルで直感的に操作できる部分ですが、チルトやバリアングルに非対応で完全に固定されています。そのためローアングルは地べたに這いつくばり、ハイアングルは何か踏み台が必要となります。また筐体がわずかに前傾するようなデザインであるため、それに伴ってモニターも緩やかに傾斜しています。撮影者の目線より低い位置で構える際は問題ありませんが、目線より上になってしまうとモニターが見づらくなってしまいます。

さらにモニターの輝度が低く、直射日光が当たるような日中の撮影ではモニターの視認性がさらに下がるため、しっかりと確認する際は日陰に移動する必要があるかもしれません。

BMPCC 4Kの本体には手振れ補正機能を搭載していないため、手振れ補正を搭載したレンズとの組み合わせが最適です。

そこにスタビライザーを組み合わせれば完璧!と言いたいところですが、コンパクトなボディでも横幅が大きいため、スタビライザーに付属するマウントプレートではアームに干渉してしまうことが多く、スタビライザーのマウント中心からオフセットさせるプレートや、場合によってはカウンターウェイトによってスタビライザーのバランスを取らないといけないようです。

ミラーレス一眼のように簡単に撮影させてくれないのがBMPCC 4Kです。

それでも盛り上がってしまうシネマカメラ

動画撮影に特化した一眼レフやミラーレス一眼カメラと比べると、何だかんだで敷居は高く、バッテリー持たない?RAWをどうやって保存する?ポストプロダクションは?頑張って作ったこのコンテンツの価値は?とか厳しい現実があります。

個人的な不満もダラダラ書いてしまいましたが、それでも良いと思えるのは「ネイティブ4Kに対応するRAWフッテージを撮影できる」これに尽きます。

バッテリーが持たないならDC出力のあるモバイルバッテリーを導入、何だかんだでファイルサイズが大きくなってしまうRAWデータはポータブルSSDに保存、RAWデータも快適に編集できる高性能なマシンを用意、そうやって頑張って作ったコンテンツはもっとアピール!

やや力任せな部分も必要になるでしょう。どうにかして形にしようとするポテンシャルと、その過程の中で撮影者のスキルもどんどん上がっていくのがBMPCC 4Kの魅力でもあります。

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